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Mel's Drive-in

Mel's Drive-in オリジナル・ポストカード
ハスケル・ウェクスラー

冒頭シーンから登場するノスタルジックなドライブイン“Mel's Drive-in”。視覚コンサルタントのハスケル・ウェクスラーによってジュークボックスのようにきらびやかな存在として印象付けられました。劇中では皆から“Burger City”と呼ばれ親しまれる社交場であり、映画全体をも包み込み込んでいるかのような風格さえ感じます。このページではアメリカン・ダイナーからドライブインへの変遷や、現在の「メルズ・ドライブイン」情報などを紹介します。

尚、「メルのドライブイン」と記述した方が、海外からの翻訳には適していますが、当サイトでは日本語の総称「メルズ・ドライブイン」で統一表記しています。

目次

ドライブインの歴史

カーホップ

アメリカ的大衆食堂と言うべきか、いわゆる「旧きよき時代」の趣のある軽食レストランをダイナー(Diner)と言います。古くは1920年代、ダイナーの前に駐車した常連客の車へのサービスとしてウェイトレスがサンドイッチなどを運ぶ姿がありました。それらは路上(カーブ)サービスと呼ばれていました。

やがて、このサービスが拡張され、ドライブ客専用の広い駐車スペースと、専任ウェイトレス(カーホップ)を有した新しいスタイルのビジネスがカリフォルニアでスタートしました。1932年ハリウッドのサンセット通りとバーモント通りの交差点に開店した「ピッグスタンド」こそが、ドライブインスタイルの発祥とされています。しかし、オススメ商品はローストポークを挟んだサンドイッチだけだったと言われます。

スピーカーボックス

最古のドライブイン・チェーンと言われる「カーペンターズ」は、あらゆる試みをしました。駐車場にスピーカーボックスを設置し、カーホップにローラースケートを履かせスピーディーな接客対応を始めると、1930年代半ばにはカリフォルニア中に続々とカーホップ・ドライブインが登場し、メニューも豊富になったそうです。
グレンデールの「ボブ・ワイアン・ドライブイン」では今日でいう「ビッグマック」の元祖的な、3層バンズのハンバーガーを販売し大評判になり、「ビッグボーイ」へと改名、1940年代には初のフランチャイズ化に成功しています。

マクドナルド

こうした勢いの中、1937年から小さなドライブインとしてスタートしたマクドナルド」が、やがてカーホップをも要さない合理的なファストフード産業へと成長させる日はそう遠くない日の話でした。

メルのドライブイン

第二次大戦後の好景気の中、1947年にメル・ワイスにより“Mel's Drive-in”は、サンフランシスコのサウス・ヴァン・ネス・アヴェニュー140番地にオープンされました。

サンフランシスコのど真ん中(地図)という最高のロケーションに出現した建造物は、全面ガラス張りとオレンジのタイルで彩られたエクステリアで、当時の流行デザインであったストリームラインを取り入れた空飛ぶ円盤のようなネオンが目を惹きました。

客席は75、クロームで縁取られたテーブル、円形のソーダファウンテンコーナーという店内は典型的なダイナースタイルで、厨房には1分間に180個ものハンバーガーを生産する能力を誇るクッカーを備えていました。

また、駐車場は110台のクルマを停められるキャパを有するもので、当時このような豪華なドライブインの建設費が13.5万ドルと言われましたが、メルズ・ドライブインはオープン後たった1ヶ月間で12万ドルも売り上げたそうです。

この成功で、1952年にはサンフランシスコのギアリー通りに2号店をオープンさせ、やがてカリフォルニア全域に11店舗展開するまでに成長します。
●Images / Special Thanks:Charlie Lecach

映画のアイコンとして

招かれざる客/Guess Who's Coming to Dinner

メルズ・ドライブインは、1967年映画『招かれざる客(Guess Who's Coming to Dinner)』のワンシーンに使用されています(画像右:帰りがけにバックさせたクルマをデュースのロードスターにぶつけてしまうシーンもあります)。しかし車内シーンは総てスクリーン・プロセス(合成)のようで、キャサリン・ヘップバーンスペンサー・トレイシーは、実際には現場には訪れていないのだそうです。また、この店舗はサンフランシスコのエクセルシオール地区にかつてあった店舗との事で1号店ではありません。

ロケシーン

前項で触れたようにファストフードの台頭によりドライブインスタイルのビジネスは衰退し、1972年までにメル・ワイスと共同オーナーであったハロルド・ドッブスはFoster'sチェーンにMel's Drive-inのフランチャイズ権を売却しています。

アメグラのロケーションマネージャーのナンシー・ジービンクはFoster'sに交渉、撮影の為の許可を得ます。しかし建造から四半世紀も経過していた為、ネオン等の電飾の交換をはじめ外壁のペイントなど修復が施されました。

この際ハスケル・ウェクスラーの提案で撮影用の照明に交換されました。ストリートに面するアローサインには“COCKTAILS”のネオンがあったそうで、原作の“BURGER CITY”に合わせ変更されたと言われます。また、カーホップにローラースケートを履かせるなどの設定も、ドライブイン最盛期のスタイルを模範にした演出と思われます。

ロケシーン

撮影は1972年7月10日から2日間夜間シーン、後の17日に店内のシーンやカートの電話のシーンが撮られましたが、三脚からカメラが落下するトラブルでフィルムを損傷した為、8月2日にいくつかの外観シーンが再収録されています。

撮影終了後にFoster'sは破産申請し、メルズ・ドライブインは売却されます。少しの間営業したそうですが、この1号店も1976年11月には完全に解体され更地になりました。

現在のメルズ

スティーブン・ワイスと共同経営者ドナルド・ワグスタッフ

アメグラの反響もあり「メルズ・ドライブイン」は1985年9月に復興する事になります。メルの息子のスティーブン(Steven Weiss)が再建し、ロンバードストリートの開店を皮切りにチェーン展開させました。この際“Mels”の名を公式に商標登録しています。それが現在カリフォルニアに8店舗参照)展開しているMel's Drive-inで、このネーミングを商標としています。 Mel's drive-in

しかし一家には家族間の亀裂が生じ、1994年に長老らはLarry Spergelにチェーン株を売却。"The Original"及び"1947年創業"を掲げるMels - The Originalがウォルナットクリークに誕生。以後、各地に展開させています。
Mels - The Original

ロケーション

以下に各店舗の所在地及びGoogleストリートビューを掲載していますので参考にしてください。

Mel's Drive-in

Mel's Drive-in MENU

※CLOSED(閉店)

Seel Beach店
  • Seel Beach店(12241 Seal Beach Boulevard Seal Beach, CA 90740:画像⇒)
  • Ontario/Rancho Cucamonga店(11550 4th St. Rancho Cucamonga, CA 91731)

Mels - The Original

カーホップ ブダー

ユニバーサル・スタジオ

ユニバーサル・スタジオ・フロリダ

劇中アイテム

カーホップトレイ

カーホップトレイ

1930年代には普及していたセーヴィングトレイの総称で、ウィンドウトレイとも呼ばれます。

劇中にも見られるアルミ製がメジャーな存在で、各店オリジナルのロゴが打刻された物なども現存しますが、サイズは概ね14"X11"規格でTra Co製が圧倒的シェアだったようです。
画像:カーホップトレイ)

少しだけアップしたサイドウィンドウにフックを引っ掛ける2点式も多く存在しますが、劇中登場するトレイはフックの無いタイプで、底面の折りたたみ式のサポートアームでドアに固定するタイプになります。黄色のラバーストッパーがポイントですね。

尚、ハンドルに固定するタイプや車内用のトレイ、はたまたナプキンやアイスクリームのホルダーなどのアタッチメントを固定できるワイヤーメッシュタイプも存在したようです。

ダブル・チャビー・チャック

“a double Chubby Chuck, a Mexicali Chili Barb, two orders of French fries and two Cherry cokes.”

ダブル・チャビー・チャック

デビーのナンパに成功したテリーがMel's Drive-inでオーダーするメニューですが、現在のメルズ・ドライブインのメニューにも載っていません。直訳すると「ダブルの太ったチャック(固定を意味する)」。つまりパテが2枚のダブルバーガー(又はビッグマック系のハンバーガー)を意味するスラング

原作では2人の'58シェビーの車内での会話が少しあり、“I'd love a double Chubby Chuck. Isn't that what you'd like more than anything right now.”というデビーの台詞が元でメルズ・ドライブインへ向かうのですが、翻訳本では「ねぇ、私がいま一番したいことなんだかわかる?(中略)チャビー・チャックよ。あんたも飲みたくない?すぐに」と話を膨らませていて、テリーは"飲み物のことか"と、動揺するくだりになっていますが、勘違いしたままメルズへ行ってオーダーしちゃうのですから、誤訳としても面白いですね。

チェリー・コーク

チェリー・コーク

現在でこそアメリカではコカ・コーラ社から販売されていますが、コカ・コーラにフレーバーを調合した物をオーダーできるダイナーやソーダ・ファウンテンは、昔からありました。現在のメルズ・ドライブインでもチェリー、チョコレート、バニラがセレクトできます。

スピーカーボックス

スピーカーボックス

駐車スペース毎に設置されたオーダー用の交信機で、“Tele Tray”というシステムです。現代のドライブスルーにも名残りがありますが、ファミレスのベルスターのように任意で呼び出しボタンを押して店内のオペレーターと交信するものになります。それでも画期的な「リモートオーダー」システムだったわけです。

但し、テリーのようにオーダーした物を受け取らずに走り去るというデメリットもエピソードとして描かれています。

リモートセレクター

SEEBURG SC-1

店内のテーブルに設置されている装置は、通称リモートセレクター(=Wallbox,Consolette)と呼ばれるもので、本来はコインを投入して選曲し、店内に設置されたジュークボックス本体からレコードを奏でる為の装置でしたが、これはSEEBURG社が1962年~65年まで生産した“Stereo Consolette”という製品。

ボディ正面には“LOW”,“MID”,“HIGH”の3段階のヴォリュームスイッチ、その下に誇らしげに“←Stereo Speakers→”とレタリングされていて、両サイドのスピーカーから流れる演奏をその場で楽しめるという画期的装置でした。それ以前のリモートセレクターは、単に選曲のみ行える装置でした。(映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー(Back to the Future)』(1985)や『ダイナー(Diner)』(1982)にも登場した同社製の“3W1”が有名(»画像:管理人所有の3W1)尚、このモデルには装飾違いが数タイプあるのですが、“SC-1”というモデルだと思われます。

参考

Google Books
The American Drive-in(プレビュー可)

The American Diner(プレビュー可)

英文サイト
Archiv Jukebox-World
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マクドナルド―わが豊饒の人材

Googie: Fifties Coffee Shop Architecture

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Last-modified: 2014-02-27 (木) 22:57:04